小野芳朗教授、三宅拓也助教らによる共編著『図説 大名庭園の近代』が出版されました

2021年 10月 07日
PHOTO: 小野芳朗教授、三宅拓也助教らによる共編著『図説 大名庭園の近代』が出版されました

小野芳朗教授、三宅拓也助教らによる共編著『図説 大名庭園の近代』が出版されました。


書籍情報
書名:図説 大名庭園の近代
編著者:小野芳朗、本康宏史、中嶋節子、三宅拓也
体裁:B5判上製/196頁
出版社:思文閣出版


小野教授・三宅助教によるコメント
大名庭園と聞くと、一般的には、江戸時代に各藩の大名たちが領地や江戸の藩邸に築造した庭園、すなわち近世の庭園としてイメージされるのではないでしょうか。観光客は大名が眺めた風景を期待して訪れ、そしてまた庭園の整備も近世の姿への回帰を進めているようです。
しかし、現在の大名庭園のイメージや空間をつくりあげてきたのは、大名が姿を消した明治維新以降の時代の蓄積です。激動の時代をくぐりぬけるなかで、大名庭園は藩主の私的な空間から市民たちが憩う公園となり、文明開花を象徴する諸施設が置かれて博覧会の会場にもなりました。その一方で旧藩主を顕彰する場にもなり、藩政期の栄華を伝える史跡や名勝として文化財的な鑑賞の対象へと変化してきたのです。このような近世の記憶を是とする視点をからは、近代に積み重ねられた多様な利用は忌むべき「雑音」であったのかもしれません。
本書はこうした「雑音」にこそ耳を傾け、現在の大名庭園から失われ、ともすれば忘れられようとしている近代の姿を、画像資料(絵図、地図、古写真、絵葉書)とともに紹介しています。この図説が、現在の大名庭園の空間に近代が与えた影響を読み解くとともに、文化財の利活用が叫ばれる時代にあって、近現代の風景をどう保存・活用できるのかを考える契機となることを願います。
なお、本書で取り上げた大名庭園のうち、岡山・後楽園、金沢・兼六園、水戸・偕楽園、高松・栗林公園については、本書の土台になっている『大名庭園の近代』(思文閣出版、2018年)に詳しく論じていますので、合わせて手にとっていただけると幸いです。


外部リンク
『図説 大名庭園の近代』(思文閣出版、2021年)
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/...
『大名庭園の近代』(思文閣出版、2018年)
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/...